時代とともに変遷する「正しさ」
〜昭和・平成・令和の幼児教育を比較して〜
はじめに
幼児教育は、時代とともに大きく変化してきた。かつて「正しい」とされていた教育方針が、今では「時代遅れ」とみなされることもあれば、逆に昔は「間違い」とされた方法が、現在では推奨されることもある。昭和・平成・令和、それぞれの時代で育てられた子どもたちは、どのような価値観のもとで教育を受けてきたのだろうか。本稿では、時代ごとの教育観の違いを比較しながら、幼児教育の「正しさ」の移り変わりについて考察する。
昭和・平成では正しかったが、令和では間違いとされる教育
1. 厳しいしつけが良い教育
昭和や平成初期では、「子どもは厳しくしつけるべき」という考えが一般的だった。体罰も「愛のムチ」とされ、親や教師が子どもを叩いて叱ることは珍しくなかった。しかし、令和の現代では、体罰は虐待とされ、子どもの人格を尊重した「対話によるしつけ」が重要視されるようになった。
2. 左利きを矯正するのが当たり前
かつては、左利きの子どもは「行儀が悪い」「不便だから」と、右利きに矯正されることが多かった。しかし、今では左利きも個性の一つとされ、無理に矯正する必要はないと考えられている。
3. 大人の話に口を出してはいけない
昔は、「子どもは大人の会話に割り込まないのが礼儀」とされ、親の話に子どもが意見することは良くないとされた。しかし、今では子どもの意見を尊重し、対話を通じて考える力を育てることが推奨される。
4. みんなと同じことをするのが良いこと
昭和・平成では、個性よりも「集団行動」が重視され、クラス全員が同じことをするのが当たり前だった。しかし、令和では子どもの個性を尊重し、それぞれの特性に合わせた教育が求められるようになった。
5. 早くから勉強を教えるべき
「読み書きや計算は早く覚えさせるべき」という考え方も、かつては根強かった。しかし、現在では幼児期に知識を詰め込むよりも、遊びを通じて学ぶ方が子どもの成長には良いとされている。
昭和・平成では間違いとされたが、令和では正しいとされる教育
1. 遊びながら学ぶことが大切
昔は「勉強は机に向かってするもの」「遊びは学びとは無関係」と考えられていた。しかし、今では遊びを通じて学ぶことが、子どもの創造力や問題解決能力を育てるとされる。
2. 子どもを褒めて育てることが重要
昭和・平成では、子どもを甘やかさないために「褒めすぎない方が良い」とされることもあった。しかし、令和では、自己肯定感を育むために「適切に褒めること」が大切とされるようになった。
3. 子どもの主体性を尊重する
以前は「親や教師の指示に従うのが良い子」とされたが、今では子ども自身が考えて行動する力を育てることが重視される。自主性を尊重する教育が、将来の社会で必要なスキルにつながると考えられている。
4. 感情を表現することは良いこと
昔は「泣くな」「怒るな」と、感情を抑えることが求められた。しかし、今では感情を素直に表現することが、自己理解や人間関係を築く上で重要とされる。
5. デジタルツールを教育に活用する
昭和・平成では、「テレビやゲームは子どもに悪影響を与える」とされ、できるだけ触れさせない方が良いと考えられていた。しかし、現在ではタブレット学習やプログラミング教育が普及し、デジタルツールを適切に使えば教育効果があるとされるようになった。
おわりに
時代とともに、幼児教育の「正しさ」は大きく変わってきた。かつては厳しいしつけが良いとされ、個性よりも集団行動が重視されていた。しかし、令和の現代では、子どもの個性を尊重し、対話を通じた教育が重視されるようになっている。
どの時代の教育にも、それぞれの良さがある。ただし、「昔のやり方が絶対に間違い」「今のやり方が絶対に正しい」というわけではない。大切なのは、時代の変化に合わせて、子どもにとって本当に良い教育を考え続けることだろう。
未来の幼児教育は、さらにどのように変わっていくのだろうか。私たち大人も、子どもとともに学び続ける姿勢が求められているのかもしれない。