「言うことを聞かない子」は、成長している証拠です。
4歳前後の“イヤイヤ”に振り回されないための、脳と心の育て方
「ごはんの時間だよ」
そう声をかけると、ふらりと部屋の外へ。
「お着替えしようか」
と言えば、急にぬいぐるみを並べ始める。
もうすぐ4歳になる娘が、まったく言うことを聞いてくれない――。
言い聞かせてもダメ、怒ってもダメ、優しくしても効果なし。
そしてついにこちらが限界を迎えて部屋を出ると、大泣き。
しばらく泣き続けて、ようやく従ってくれる…。
これは、筆者自身が子育ての中で感じた「無力感」と「疑問」だった。
でも、この行動にはすべて“理由”があることを、心理学と脳科学から学ぶことができた。
■「言うことを聞かない」は、実は“脳”の仕業
3〜4歳の子どもは、脳の中でも「前頭前野」が発達途中にある。
この部分は、大人で言えば「理性」や「計画」「感情のコントロール」を担う場所。
しかしこの時期は、まだ“感情”や“衝動”を優先しやすい。
「ママに言われたからやる」よりも、
「今はこれがしたい」が圧倒的に強いのだ。
つまり、「わざとやっている」のではなく、「できない」状態なのだ。
■親を“試す”行動の正体
さらにこの年齢特有の行動に、「境界テスト(リミットテスト)」というものがある。
「どこまでならママは怒らない?」
「このくらいなら許される?」
これは反抗でもわがままでもなく、親との関係性を確認するための“信頼行動”。
安全基地であるママだからこそ、心を試してしまう。
だから、泣いて従ったからといって
「ほら、叱ったら言うこと聞いたじゃん」では済まされない。
それは一時的な“恐れ”や“見捨てられ不安”からの行動かもしれないのだ。
■「〇〇して」ではなく、「一緒にやろう」へ
これまで試してきた声かけ――
「どっちの服を着る?」や「あと5分でご飯だよ」は、
自主性を促すには有効だとされる手法だ。
しかし、意思が強く、感情優位なこの時期には通じないこともある。
子どもの“やりたい”が先に立ち、「選択肢」さえもスルーされる。
そこで効果的なのが、「一緒にやる」工夫だ。
たとえば:
・「どっちが早く着替えられるか競争しよう!」
・「スプーンを運んでくれる人、誰かな〜?」
ゲーム感覚や“お手伝い役割”として働きかけると、子どもは動きやすくなる。
■泣き止ませるより、気持ちを言葉にする
子どもが癇癪を起こしたとき、
「泣かないの!」よりも大切なのは、感情をラベリングしてあげること。
「まだ遊びたいんだよね」
「ごはんよりブロックが気になるよね」
そうやって気持ちに名前をつけてあげると、脳の前頭前野が落ち着く。
これはハーバード大学の研究でも証明されている科学的事実だ。
■「泣いたから戻る」…それって本当にいいの?
筆者も、あまりに言うことを聞かない娘に対して、
「もう知らない!」と距離を取ることがある。
すると泣いて追いかけてくる。
その姿に心が揺れて、つい戻ってしまう…。
でもそれは、「泣けばママは戻ってくる」と誤った学習になるリスクもある。
本当に伝えたいのは、**「泣かなくても、ママはあなたの味方だよ」**という安心感だ。
そのためには、日頃からのルーティンづくりと感情の共有が大切になる。
■言うことを聞かない日は、成長のチャンス
「イヤだ」「したくない」「無視する」
…これらすべては、子どもが自分の意思を育てているサイン。
もちろん、毎日向き合うママ・パパは大変。
でも、“できないこと”を一緒に乗り越えることが、子どもの心と脳を育てる時間になる。
今日は言うことを聞かなくても、
明日はちょっとだけスムーズに動けるかもしれない。
あなたの声かけは、ちゃんと届いています。
焦らず、一歩ずつ、心の土台を育てていきましょう。