『5円玉がわからない』は恥ずかしいことじゃない。

―お金の数え方に悩む親子に伝えたい、やさしい教え方―

「5円、50円、500円…もう何がなんだかわからない!」

あるお母さんが、こうつぶやきました。
「うちの子、お金を数えるのがとにかく苦手で…。特に“5のつくお金”が出てくるとパニック。数字も読めるし、簡単な足し算もできるのに、お金になると途端に混乱するんです。」

…でも、実はそれ、特別なことではありません。
むしろ、小さな子どもがつまずくのは“ごく自然なこと”なのです。


■「5」は実は、ちょっと“クセのある数字”

私たちは何気なく「5円、50円、500円、5000円…」と使っていますが、この「5の倍数」、子どもにとってはとてもややこしい存在です。

なぜなら、「10進法」で学ぶ世界において、“5”は中途半端で、見た目の法則性が崩れるからです。

たとえば「1→10→100→1000」のような“キリのいいゼロ”の並びは覚えやすい。
でも「5→50→500→5000」は、どれも“ど真ん中”のようで、どこか曖昧。見た目が似ているのに、価値が違う…。

大人にとっては常識でも、子どもにとっては「急にルールが変わったように感じる」んですね。


■「他の子はできてるのに…」と思ったら要注意

「もしかして、うちの子だけ…?」

そう心配になる気持ち、よくわかります。
でもご安心を。これは発達段階でごく普通に起きることです。

実際、教育現場でも「お金の種類の区別がつかない」「位の感覚が混乱する」などの相談はよくあります。特に“5”がつく硬貨はつまずきやすく、算数が得意な子ですら「どうして?」と悩むことも。

「つまずく=頭が悪い」ではなく、
「まだその概念が定着していない」というだけ。
脳の発達や経験の差にすぎません。


■じゃあ、どうやって教えたらいいの?

まず大切なのは、焦らないこと。怒らないこと。
そして、以下の3つのステップを意識してみてください。


① 視覚で覚える

子どもは、“見て”覚えるのがとても得意です。

たとえば、5円=黄色、50円=青、500円=赤、など色で区別する。
もしくは、お金に「キャラクター」をつけて、視覚的に親しませる。

目で見た情報は脳に残りやすく、数字と価値の関係も整理しやすくなります。


② 体で感じる

「5の感覚」は“手の指”がぴったりです。

「5円=指5本」「50円=10円玉5枚分」など、ジャンプや手遊びで“動き”とセットにすると、子どもはすっと理解します。

抽象的な概念を、具体的な動きで“実感させる”ことが、脳の深い理解につながります。


③ 遊びの中で学ばせる

そして最後におすすめなのが、「お買い物ごっこ」。

「これいくらかな?」「50円と10円で、合わせていくらになる?」
実際に使ってみる、動かしてみる。それだけで、机上の計算とは違う理解が得られます。

遊びの中では「間違っても平気」という安心感があります。
この“安心”こそが、学びを支える最大の力です。


■やってはいけないNG対応

残念ながら、親がついやりがちなのが「叱ること」。

「なんでできないの?」「もう何度目?」
その一言が、子どもの思考をシャットアウトします。

理解には時間がかかるもの。
“教える”というより、“育てる”という感覚が大切です。


■まとめ:お金の学びは、「価値観」の学びでもある

お金を数える力は、単なる計算力ではありません。

それは、「価値の見積もり方」を学ぶこと。
「何に、いくら払うべきか」「どうやって支払うか」という、人生に欠かせない“判断”の種をまくことでもあります。

今、「500円って何?」と迷っている子どもは、
きっと将来、「これは500円の価値があるのか?」と自分で考える大人になれる。

だからこそ、今のつまずきを、「成長のチャンス」と捉えてほしいのです。


あなたのたった一言で、
今日も、明日も、お子さんは前に進めます。

「わかるって楽しいね」
そう笑える瞬間が来るまで、どうか一緒に歩んであげてください。

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