婚活で「決められない人たち」がなぜ増えたのか?
そしてその裏にある“ビジネス構造”とは
「結婚したいのに、なかなか決められないんです」
そんな悩みを抱える婚活者が、いま急増しています。婚活アドバイザーとして数多くの現場に立ち会ってきた人々からは、「結婚したいという割に、相手を決めきれずに婚期を逃す人が本当に多い」という声が上がっています。
これは、単なる「優柔不断」ではありません。背景には、現代の情報社会が生んだ“選べることの弊害”があるのです。
選択肢が多すぎる社会で、私たちは「決める力」を失っている
心理学には「選択のパラドクス(Paradox of Choice)」という概念があります。選択肢が増えると人は自由になったように感じる一方で、実際には「後悔」や「比較」によって意思決定が難しくなる、という現象です。
婚活の現場でも同じことが起きています。マッチングアプリ、婚活パーティー、結婚相談所。プロフィールを開けば、年齢、年収、趣味、顔写真、趣向…無限の条件が目の前に並びます。
「もっといい人がいるかもしれない」と思うたびに、今目の前にいる相手との縁は薄れていく。これは、恋愛ではなく“買い物”に近い感覚です。
SNSとマッチングアプリが「比較脳」を育てている
さらに、この“選べなさ”に拍車をかけているのがSNSとマッチングアプリです。SNSでは、幸せそうなカップルの投稿が次々に流れてきます。理想的なプロポーズ、海外旅行、美味しそうなディナー…。他人の「最高の瞬間」だけを切り取った写真に、つい自分の現実を重ねてしまう。
一方、アプリでは“次へスワイプ”が常態化し、「この人より、もっと上の人がいるかも」と、無意識に比較を繰り返します。
このように、「もっと、もっと」と上を目指しているつもりでも、実は“決断を避け続けている”という現実があるのです。
婚活市場の“現実”を知れば、幻想から目が覚める
では、実際にどれくらい「理想の相手」が市場に残っているのでしょうか?
たとえば、「30代〜40代で年収600万円以上の独身男性」は、全体の8%未満と言われています。しかも、そういった人は、早い段階で結婚して市場から姿を消してしまうのが現実です。
つまり、市場に残っているのは「選ぶ側」ではなく、「選ばれていない側」になりがち。それでも「もっといい人がいるはず」と探し続けてしまうのは、婚活者自身の現実認識がズレている可能性が高いのです。
なぜ婚活業界は「決められない人」で儲かるのか?
このような“決められない婚活者”の存在は、実は業界にとっては非常にありがたい存在でもあります。なぜなら、結婚が決まらなければ、
- 月会費
- 紹介料
- お見合い料
- オプション講座
などが、ずっと支払い続けられるからです。
ある大手相談所のデータでは、「活動が2年以上に及ぶ会員」が全体の6割を超えるとされており、その間にかかる費用は数十万円にのぼるケースもあります。
成婚によって契約終了となるよりも、「悩み続けて活動を続ける人」の方が、収益性が高いという構造になっているのです。
結婚は「選ぶ」ものではなく、「決める」もの
もちろん、婚活ビジネスそのものを否定するつもりはありません。むしろ、適切に利用すれば、とても心強い味方になります。
でも大切なのは、「選ぶ」ばかりに目を奪われず、
「この人と人生をつくっていけるか?」
「この人と老後を迎えていきたいと思えるか?」
という“生活目線”で相手を見ることです。
完璧な条件を探すのではなく、不完全な相手とどう補い合えるか。それこそが、“決められる人”になるための第一歩です。
最後に
婚活でつまずいている人の多くは、自分でも気づかないうちに「選べる自由」に飲み込まれています。でも、人生における本当に大切な選択は、比較の中から生まれるものではありません。
勇気を出して「決める」。
それが、幸せな結婚への一番の近道かもしれません。