言葉が通じなくても大丈夫。
― 赤ちゃんの“サイン”を見逃さないで ―
まだ言葉を話せない赤ちゃんが、指差しをしたり、あなたの手を引っ張ってきたりする。
その瞬間、「この子、何を言いたいんだろう?」と戸惑ったことはありませんか?
実はそれ、**立派な“会話”**なんです。
赤ちゃんは言葉が出る前から、たくさんの気持ちを体いっぱいで伝えようとしています。
そして、そのサインを受け取れるかどうかが、親子のコミュニケーションの第一歩になります。
ベビーサインってなに?
「ベビーサイン」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、言葉を話す前の赤ちゃんが使う、しぐさ・動き・表情などによる意思表示のことです。
たとえば「おっぱい」「もっとちょうだい」といった意味を、特定のジェスチャーで伝えたりします。
アメリカの研究では、ベビーサインを使って育った赤ちゃんは、
言葉の発達が早く、親子の信頼関係も深まりやすいという結果が報告されています(Acredolo & Goodwyn, 2000年)。
「指差し」はお願いの第一歩
赤ちゃんが「あっち」とばかりに指を差すとき。
それは、「見てほしい」「欲しい」「気になる」といった気持ちのサインです。
特に、生後10か月を過ぎると、目的を持った指差しが増えてきます。
この時期に親がちゃんと反応してあげると、
「伝えたらわかってもらえる!」という安心感を得ることができるのです。
「手を引っ張る」は注目してほしい証
娘や息子にぐいっと手を引っ張られた経験、ありませんか?
それは、「ここに来て」「これ見て!」という赤ちゃんからの招待状です。
言葉では言えないからこそ、体全体で“伝えよう”としているんですね。
このサインに気づいて動いてあげると、
赤ちゃんはさらに自信をもって意思表示をするようになります。
表情で、赤ちゃんはしゃべってる
赤ちゃんの笑顔、泣き顔、しかめっ面。
これも立派な“会話”です。
楽しいとき、びっくりしたとき、いやなとき――
全部、顔に出ています。
「今この子、どう感じているのかな?」と意識して見てみてください。
親の表情や声かけによって、赤ちゃんの表情も豊かに育ちます。
動きにも意味がある
赤ちゃんが急に足踏みしたり、体をくねらせたり、
あるいは同じ動きを繰り返したり。
そんな時は、「なんでだろう?」と目を向けてみてください。
言葉では説明できないけど、何かを伝えたくてそうしていることがあります。
それが退屈なのか、興奮しているのか、不安なのか――
ヒントは、普段との違いや、前後の状況にあります。
「気づける親」になるコツ
では、どうすれば赤ちゃんのサインに気づける親になれるのでしょうか?
答えはシンプルです。
**「意味を持って観察すること」**です。
ただ何となく見るのではなく、
「いま何を考えてるのかな?」「この行動はどういう意味だろう?」と想像してみてください。
観察を習慣にすると、驚くほど子どもの“サイン”が見えてきます。
最後に ― サインを受け止めることは、愛情のかたち
赤ちゃんが伝えてくるサインに、100%完璧に気づくことなんて、誰にもできません。
でも、「気づこうとしている姿勢」だけで、赤ちゃんはちゃんと感じ取ってくれます。
「わかったよ」「これかな?」「一緒に考えようね」
そんなふうに声をかけてあげるだけで、
赤ちゃんは安心し、もっとたくさん“伝えたい”と思ってくれるようになります。
言葉が通じない時期こそ、心で会話するチャンスです。
あなたのそのまなざしが、赤ちゃんの世界を広げていきます。